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遺伝子の話

私は科学と言う分野の端っこで仕事をしています。
この時期に、いつも思い出すことがあって・・・。

それは或る日の事・・・そう・・・初めて肉眼で遺伝子を見た
その時の事なのです。

顔も知らない患者さんから、35ccほど血液を頂いて
2日かけて遺伝子を抽出しました。
2日目の最後の行程で試薬を入れ、チューブにキャップをし
一振りすると・・・・・それは・・・姿を現しました。
白い半透明で、まるでクラゲの赤ちゃんのような
遺伝子の固まり・・・・・。
『何て綺麗なんだろう・・・』これが素直な感想でした。
この遺伝子に、どんな人生が組み込まれているんだろう・・・
そんな思いで暫し、見とれていたものです。
患者さんですから何処かに問題を抱えて来られているのは間違いないけれど
『この遺伝子の持ち主は、どんな人生を歩んで来られたのだろう・・・』と
思いはどんどん広がって行きました。

あの時の、あの遺伝子を見ていなければ
私は今の仕事をしていなかったかも知れない・・・。

辛い時、苦しい時、そして慌しい年末になると
いつも、あの光景と感動を思い出すのです。

by n_773m | 2005-04-28 21:21 | エッセイ