葛藤
施設の介護士をしていると
日々 抱える葛藤がある・・・
Tさんは殆ど意思疎通も出来ず
勿論歩けず
車椅子
自走も出来ない
歩けないし立てない
皮膚は薄く具合も悪いので
直ぐに剥離が出来たり
出血したりする
アタシたち介護士は
Tさんに話しかけたり
食事の介助をしたりしながら
その表情から
気持ちや訴えを読み取る
本社から来ている命令口調の指導担当は
そのTさんも「トイレに座らせろ」と言う・・・
尿意も便意も
勿論無いTさん
そして食事の時は「椅子に移乗しろ」と言う・・・
膝関節も足首も
既に固まってしまっている
入居した時からだ
「剥離が出来たり出血したりするのは、技術が低いからだ」
とも言う
それは否定出来ない・・・何故なら
介護士にも色々居る
仮にスペシャリストばかりだとしても
『絶対大丈夫』などと過信するならば
それは傲慢な考えだと思う
アタシは何度も抗議した
彼らは理論でしか考えない・・・
そして異論を唱える者はバカにされる
『究極の介護』とは 何だろう?
常にその疑問が重く伸し掛っていたが
答えをやっと見つけた気がする
最高の介護とは・・・『現状維持』
積極的なアプローチは悪くないけれど
人は・・・老いる事を止められない
トイレに無理やり座らせても
別人のように何十歳も若返ったりはしない
最高のサービスとは・・・『下降曲線に気がつかない位、緩やかに穏やかな最後の時間を作る』
目新しい事を どんなに自信を持ってやったとしても
毎日傷だらけにされたら
家族はどんな思いで居るだろう?
Tさんは急激に衰弱し始めた
家族は急な変化に
戸惑っている
そして手足には繰り返される剥離で
皮膚が見えないくらい
ガーゼが貼られている
当たったのではなく
触れただけでも
剥けてしまうほど
全身状態が悪いのは・・・
もう随分前からだ
何度抗議しても
無理やりな介護を指示される
そして傷が出来たと言っては
アタシたち介護士のレベルが低いからだと・・・
葛藤は毎日続く
Tさんは どこまで耐えなければいけないのだろうか?
by n_773m | 2013-02-03 17:16 | 日常のetc.