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春 別れ・・・

今の施設長になってから
5ヶ月が過ぎた

彼は 施設が一番 大変な時にやって来て
背広を着ていたのは
初日だけ

次の日からはユニフォームを着て
フロアの仕事を手伝ってくれる事も
珍しくはなかった

若く可愛い感じの顔立ちもあり
職員は疲れ果てていた事もあって
『いつまで続く事やら』と
冷ややかな目で見ていたのを思い出す

それでも少しづつ職員の信頼を得て
彼の行動は実り始めていた


夜中に残っていた彼を見つけては
アタシも噛み付いた事が何度かあり
会社と言う組織と
現場と言うチームワークの板挟みで
苦しんだ事も有っただろう


会社は・・・ハッキリ言って
利益しか見て居ない

収益が上がる事なら
現場の困惑も苦労も
利益の邪魔になると思っている

約1ヶ月前
若き施設長は
社長の『ゲキリン』に触れたとの事で
呼び出しを食らっていた

見学に来た家族が居て
入居させたい本人は
介護度5 目を離せない状態だったと言う

しかも当時の空室は
最も目の行き届かない増設した部屋だった

施設長は「このフロアーでは目が行き届き難い」と
家族に告げ 結果
契約には結びつかなかったのである

これが社長の『ゲキリン』に触れた・・・



若き施設長は・・・
明日から移動になる

つまり飛ばされる


実はスタッフも指を咥えていた訳ではない

が・・・
願いは叶わなかった


昼休み
休憩室に彼を招き
花束とメッセージを皆で渡した

彼は・・・
目を真っ赤にして
言葉に詰まっている

「いいよ、ここなら泣いて・・・」

誰かが言った


彼は一つ 深呼吸をしてから
挨拶した

       皆さんに こんなにして頂き
       施設長をやっていて
       本当に良かったと思います・・・

       皆さんに無理難題を押し付け
       本当にご苦労もお掛けし
       それでも・・・
       こんな風に送り出して下さって・・・

       施設長冥利に尽きると思います
       本当に
       有難う御座いました・・・


「帰ってきてよ♪」

また誰かが言う



春 別れ・・・


今も思い出す事は
極度の人員不足で
スタッフの疲労が極限になった時
本社に賭け合って
8人増員と言う枠を取ってくれた事

そして新たなスタッフが入った時
施設長がアタシにそっと言った事

        〇〇さん ボクは約束を守りました
        
        だから貴方も辞めないで下さい


春 別れ・・・

彼が居なくなる事は
予想もしない事だった

春 別れ・・・_d0036742_2259321.jpg
 

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by n_773m | 2011-03-31 23:02 | 日常のetc.